自治体PRM-Policy Relationship Management

自治体PRMは、特許に基づくPolicy Relationship Managementを自治体経営に応用した、地域の自律、自己決定を迅速かつ柔軟に実現する新しい地域経営のエンジンです。

行政による「広報・公聴」は、住民に十分には届いていません。
「地方議会」も社会環境の変化に対応できていないという機能不全が長らく指摘されており、議会改革などの事例も増えつつありますが、個々の要素の改善では各地域、自治体に求められている住民も拘りながら迅速かつ柔軟な意思決定には程遠い状況です。
この問題解決には各地域、自治体内のコミュニケーション構造に着目することが必須です。

・コミュニケーション構造の問題とは?

多くの自治体では、『無難な選択』が繰り返されています。その理由は、行政と住民が繋がる機会がほとんどないことに起因しています。下図のようなコミュニケーション構造によって地域資源を浪費していることはよくある話ですし、東京都における新国立競技場や築地・豊洲市場の問題はこの構造から起きています。

こうしたことが起こる原因は、地域における自治、行政コミュニケーションのありかたがそもそも構造的にうまくいかないように出来上がっているからです。
最初から問に誤りのあるテストみたいなもので、個別の要素の改善では出口がありません。

『無難な選択』の結果は、課題解決の先送りとなって、地域経済の衰退や財政の危機、若年層の流出による人口減少などに現れます。図にするとこんな感じです。

それぞれの立場を見てみましょう。

住民は日々の暮らしの安定と損をしないことが第一です市役所や町役場などの行政がどんな課題に直面しているかほとんど知りません。日々の暮らしと地域の課題には密接な関係があることが多いのですが、行政から届く広報紙などを精読する人は少なく、公聴の機会があっても参加しようと積極的に考える人はさらに少数です。この背景には、行政の課題について「情報収集」から「分析」を行い、「意思表示」をすることが面倒くさいことと、もしそれを行ってもまず割に合わないという認識があると見られます。そんなことに時間と手間を費やすなら、仕事で稼いだり余暇を楽しむことを合理的選ぶわけです。

議員にとって、重要なことは選挙で落選しないことです。行政の課題について「情報収集」から「分析」を行い、「意思表示」することは住民に較べて議員の立場であれば格段にやりやすいのですが、そういう仕事をすることが必ずしも”落選しないこと”には結びつかない現実があるので、合理的に確実に落選しないように議会内や派閥内などの慣習に合理的に合わせて振る舞います。

首長にとって、大切なことは孤立しないことです。当選時に掲げた改革メニューを推進しようとしても議会と対立して否決されると頓挫してしまいます。住民の支持が明確であれば良いのですが、多くの住民は選挙時以外の地域課題への関心が低いので首長は支持団体の方を向きがちになりやすく、合理的に議会との協調路線を選択しがちになります。

行政機関(市役所や町役場など)には、決められたことを確実に行うという発想が念頭にあります。前の年度や、かなり前に策定された計画をその場の状況に合わせて柔軟に変えることは現場では極めて困難です。合理的に既定路線が踏襲されます。

人間はインセンティブの奴隷です。合理的に損をしない、得をする方を常に選びます。住民、議員、首長、行政機関のだれもがそれぞれの合理性を以って、『無難な選択』を行い全体として地域の衰退を招く選択を繰り返してしまうのが私達の社会の構造です。
そのため、首長だけ、議会だけ、行政だけなどが部分的に頑張っても地域はなかなか変わりません。運良く首長と議会、首長と行政の方向性と頑張りが揃うと成功事例になります。しかし、それは運の要素が大きいので他の自治体に拡がりません。

・課題解決を実現する『自治体PRM』のプロセス

「自治体PRM」は、この個々の立場としては合理的なのに、全体として誰も望まない結果を招いてしまう構造を改善するコミュニケーションデザインです。

地域のビジョンなどに基づき地域課題を考えるテーマを開発し、全ての住民、議員が回答参加することで意思形成を行います。

一般的に行政では意識調査という形で住民から行政の施策への満足度や定住意向などを調べますが、一般的に行政では意識調査という形で住民から行政の施策への満足度や定住意向などを調べますが、この手法では地域の意思形成を行うことができません。

そこで、地域課題を分析することから、その課題をどのように考えられるかを設問テーマとして開発し、全ての住民と議員に共通の情報と問いかけとして示すことで、「ひとりひとりが地域課題を主体的に考え意思表示し、継続的に関わる」ことによる意思形成を可能にします。

・回答参加のステップ

「自治体PRM」は、下図のような回答参加のステップになります。(画面は塩谷町での「塩谷町民全員会議」より)

①事実の共有と確認
参考情報が併記された設問が表示され、選択肢に応じて次の設問が表示されます。参考情報には、考える材料として統計データなどが表示されます。

②自分の見解の表明
回答結果は、テーマについてどう考えるかのタイプ判定として表示されます。ポジティブな視点、ネガティブな視点を提供し、腑に落ちない場合は再度回答を行う事ができます。

③他者の見解の俯瞰
無作為抽出回答者を含む、他の回答者の回答タイプがどのような傾向になっているかを性別や世代別などの切り口で確認できます。
受付期間中は、何度でも回答をやり直す事ができます。

④議員とのマッチング
議会の議員がどのように回答してるか、同じタイプの議員やタイプの異なる議員をコメント付きで確認できます。
未回答の議員にはリクエストボタンから回答を要請できます。

⑤建設的な意思形成
住民と議員の回答を集計することで、意思形成が実現します
集計結果は、広報誌などでも発表します。

自治体PRMには、10代前半(小学生高学年)から参加できます。10代と言っても数年で社会に関わる存在です。
多くの調査や住民参加の手法では、10代の参加は極めてわずかであり、問題に直面する
現在の10代、20代の声を聞かずに中高齢層だけで話をしていることは珍しくありません。それでは、問題解決になりません。「自治体PRM」では次世代層を巻き込む行政コミュニケーションが可能です。

・住民、議員、首長、行政の「四方よし」

行政の持つデータや首長のビジョンなどから開発した設問テーマに住民議員が回答することで、コミュニケーション構造の断絶が解消されます。

「自治体PRM」はバイパスとして機能し、それぞれの立場にメリットを生み出します。

・住民は、自分の考えをタイプとして表明することができ、参加者の回答動向や、議員回答とのマッチング情報を通じて地域課題に主体的かつ能動的に関わることができます。

・議員は、自身の考えを市政報告や広報では届かない人々に伝えることができ、自分への支持がどのようになっているか知ることができます。

・首長は、住民や議員の回答から建設的な議論を行える環境を得ることができます。

・行政は、住民、議員、首長が共通の情報と設問に回答した結果に基いた意思形成に基づいた施策を推進することができます。

それぞれの立場が繋がることで、社会環境の変化などで状況が変わった場合にも、迅速に意思形成を行うことができ、柔軟に施策を調整することができます。

住民投票は強力な手法ですが、二者択一式であり細かな議論を一層することすらあり、実施には手間がかかるという硬直さがあり使い勝手はよくありません。選挙では候補者を選ぶことはできますが地域課題を解決するコミュニケーションには必ずしもなりません。

「自治体PRM」は二者択一式に陥らない形式で地域課題への考えを表明でき、既存手法よりも柔軟かつ議会や行政を動かす形で住民が意思表示を行えます。

・「協調コミュニケーション」による自治体経営

市町村、都道府県は幅広い世代の住民参加による意思形成、合意形成が求められる政策課題(防災、都市計画、公共施設、上下水道等のインフラ運用、教育行政、公共交通など)に直面しています。

どんなに地域が広大でも、どんなに人数が多くとも、迅速かつ柔軟に「自治体PRM」は、住民-議会-首長-行政の”協調コミュニケーション”を実現し課題解決の礎を構築できるので、「総合計画の策定と運用」、「人口減少への対応」、「新しい施設の計画」「公共交通問題」、「公共施設の再配置」、「橋梁や水道などインフラ運用」、「地域独自の教育行政の確立と運営」などで効果を発揮します。